第18章 炎虎 【煉獄杏寿郎】1
今日はその高級クラブで若頭である堂磨の直属の部下の出所祝いを若頭補佐の1人である煉獄が取り仕切って行う。実質、堂磨の弟分に当たる煉獄が経費を全て持ち、準備等の諸々は煉獄の側近の高橋が動く。
若頭の堂磨は女遊びが激しいので、近づいても一度セックスしたら終わりになってしまう。しかも、彼に関わると何故かその後行方不明になってしまう女性も多い。優しそうに笑う顔が造り物の様で危険過ぎる。
なので、今回の狙いはそっちではなく、若頭補佐だ。三人いるが、冨岡は寡黙なため、情報を得るのには不向きで、伊黒には少し前に結婚した嫁がいてかなりの愛妻家らしい。
となると、残るは煉獄だ。女に関しての情報は無い。近づいてみて反応を伺う。資料の中にマザーコンプレックスの疑いという表記と病気で亡くなる前の母親の画像があった。今回はそこを少し突いてみることにした。
というよりも、あやは特に接客術が長けているわけではないので、とりあえずまずは見た目で惹きつけ、初々しさでいく方法を取らざるを得なかった。面倒見が良い性格らしいのでおそらくうまくいくだろう。
幸いあやも煉獄の母と同じく、長い黒髪だったので、ヘアーセットの時に緩く巻いてサイドに寄せてもらうスタイルにし、メイクもネイルもドレスも清楚系を準備していた。
源氏名も「るか」にしようか考えたが、何かの時に怪しまれると良くないので、色々考えたが本名の「あや」でいくことにした。煉獄が駄目なら難しそうだが冨岡に近付くが、どうせホステスとして潜入するのは長くて三カ月程度だ。
その期間で成果が得られないなら他の部署か今の部署でもあまり外に出ない仕事になる。そもそも組織犯罪対策部に女性はほぼ必要ない。どっちがヤクザか分からない様な強面の男性が殆どだ。
昨今のクスリ関係の犯罪が凶悪の一途を辿っている為、喉から手が出る程情報が欲しく、潜入捜査は苦肉の策なのだ。潜入捜査はハイリスクローリターンなので今の時代は基本的にやらない。今回は試験的な作戦になる。
あやはおそらく今回が家族の死に近付く最初で最後のチャンスになる。