第18章 炎虎 【煉獄杏寿郎】1
あやの父が殺される前に追っていたクスリを扱っていたのは、おそらくこの産屋敷組と対立している鬼舞辻組。
産屋敷組はヤミ金業や不動産、運送業、水商売系店の経営などの正当なというと語弊があるが、彼らなりの任侠道の中での昔ながらのヤクザらしいシノギが多い。勿論それなりのシノギが上がるという事は叩けばかなり埃が出る。
一方、鬼舞辻組は特殊詐欺やクスリの売買に関わるハイリターンのシノギが多く、何のポリシーも無く任侠道というものとは程遠い。一般人でも警察官でも構成員の家族でさえも邪魔になると拉致して殺してしまう何でもありの危険な集団。
その大きな二つの組でうまく住み分けができていたのだが、数年前からクスリや詐欺を追っていくと産屋敷組もチラついてきている。この二つが衝突するのも一つになるのも怖い。
特に今年に入って、鬼舞辻組は海外で流行している新しいクスリを取り扱い始めたらしく、それに関わる死亡事件や行方不明事件も増えてきた。今月は特にひどい。一日に数名のペースで薬を使用した若者が亡くなっている。
あやは数週間前から煉獄の管轄の高級クラブにホステスとして入店し、産屋敷組に近付くのを待っていた。
鬼舞辻組にも一人近付くことになっている。
通常の組織犯罪対策部の刑事たちはヤクザとお互いの利害が一致するような情報を共有したり、暴力行為を牽制したりする為に普通に暴力団関係者と顔見知りになる。勿論お互い知られたらまずい情報は漏らさないが。
頭のいいヤクザ程、刑事の情報を上手に使う。
あや達は彼らのテリトリーに潜入してヤクザの幹部に近づき、彼らにとって知られたらまずい情報を少しでも引き出す。