第18章 炎虎 【煉獄杏寿郎】1
約5時間前
警察官に連れられて黄色と黒のテープで囲まれた我が家に入る。
リビング中に飛び散った血。
ほんの十数時間前に囲んだ食卓には血の付いた包丁。
「行ってきます!」という私の声に笑顔で返してくれた母はリビングから玄関に繋がるドアの前で、青いと言うよりも白い顔で弟に覆いかぶさるようにうつぶせになっており、周りには二人分の血溜まりができていた。
浴室からザーザーとシャワーの音がする。浴室のドアは開いていて、父の足が見える。床に倒れたの状態から動く気配のない足・・・・。
「・・・はっ!!!」
「・・・眠ってた。」
マンスリーアパートの一室であやは目を覚ました。どうやら資料に目を通している時にソファで眠ってしまっていたらしい。テーブルの上にある2台のスマホの内の一台を手に取って時間を確認する。
15時。
出勤時間まではまだ少し時間がある。仕事用のスマホに届いたメールの内容を簡単にチェックして、今日の自分のこれからの予定を上官の後藤に送る。
冷蔵庫から水と、コンビニで買っておいたサラダチキンを出して食べながらまた資料に目をやる。
関東指定暴力団 産屋敷組 組織図
組長 産屋敷耀哉 37歳
若頭 堂磨 32歳
若頭補佐 冨岡義勇 28歳
若頭補佐 伊黒小芭内 28歳
若頭補佐 煉獄杏寿郎 27歳
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あやは顔写真入りの資料を見ながらやっとここまできたと気分が高揚し、心臓が高鳴るのを深呼吸しながら落ち着ける。
10年前、あやの家族はあや以外皆、殺された。あやの父は麻薬取締官だった。仕事の特殊性からあやが生まれる直前に両親は表向きには離婚した。何かの危険に巻き込まれないようにという父の配慮で、両親の仲は良かったが一緒には住んでいなかった。
あの日はあやの16歳の誕生日で時間を作って会いに来てくれていたのだ。
家族が父の仕事の関係で殺されてしまったのは高校生のあやには容易に推測できた。
あやはその後祖父に引き取られた後、武道を習い、必死で勉強し警視庁に入った。
組織犯罪対策部に配属されたのは今年の春だった。