第17章 ※天馬行空 【宇髄天元】 3 完
次の日はフィレンツェの美術館巡り。美術準備室で一緒に見た図版の彫刻や絵画はほとんど見に行った。
三日目はベネチアにモザイクを見に行った。
四日目はまたフィレンツェとローマ。ローマに泊まる。
五日目は少しローマを歩いてから空港へ。
エスプレッソは2人で何回も飲んだ。
この五日で宇髄君とはすっごく仲良くなった。
あっという間に過ぎた。
空港で飛行機の搭乗時刻を待ちながら手を繋いで色々話した。
「あやちゃん。日本には帰って来ないの?」
「3月初めには帰るよ。春からの仕事探さなきゃね。」
「また会える?」
「うーん。どうかな。東京からは引っ越す。しばらく住まない。」
「どこに住むの?そこに会いに行っていい?」
「・・・宇髄君。私が辞めた事に責任感じたり、無理に会おうと思ったりしなくてもいいんだよ?」
「・・・・さっきから何でそんな意地悪ばっか言うんだよ?」
「宇髄君の大事な時間を使わせるのが申し訳なくて。」
「俺、あやちゃんと過ごすのが一番大事な時間なんだけど?」
「・・・・人の気持ちは変わるからね。宇髄君まだ若いし。」
「俺さ、京都の大学行きたいから、あやちゃんそっち方面で仕事探して。」
「・・分かった。宇髄くんが京都の大学に合格してもそう思ってくれるなら考える。」
「あやちゃん。大好き。また連絡する。」
「ありがとう。受験、頑張って。」
宇髄君は私を抱きしめた後、優しく唇を重ねてからにこっと笑ってゲートに進んでいった。
3月の初め。宇髄君は京都の芸術大学の合格通知の画像を送って来た。「一緒に京都に行こう」って。
・・・経済じゃないじゃん。美大行くんじゃん。
宇髄君、ご両親とほぼ勘当状態で大学受験したみたい。
宇髄君のお母さんには天元さんともう会いませんって言ったけど、勘当したなら日本で会ってもいいかな?
私は京都の美術予備校の講師の仕事に就いた。好きって言えないくせに、また宇髄君の傍に行ってしまった。
…違うな。好きって言わないんじゃなくて、どんどん言えなくなってきた。