第17章 ※天馬行空 【宇髄天元】 3 完
「そう。・・・お金は?直行便高かったでしょ?」
「俺のひいひい爺さんが残してくれた遺産。俺、顔がそっくりで名前もその人から貰ったんだってさ。なんか大正時代の人。じいちゃんがババアに内緒でこっそりくれた。当時だとすげぇ大金だったみたいなんだけど、物価変動で今の価値にすると遊んで暮らせる程はないけど、好きな大学は充分行けるくらいの金額。」
「・・・大切なお金、使わせちゃって悪かったね。」
「俺、ちょっと大きくなったからさ。あやちゃんとイタリア歩きたいと思って。有意義な使い方じゃねぇ?」
「あ。そうか。誕生日おめでとう。・・じゃあせっかくだから、観光しよう。来てくれて嬉しい。」
「ん。」
宇髄君はそっと手を差し出す。私がその手を取って二人で手を繋いで駅に向かった。
この日はローマのバチカン美術館、ボルゲーゼ美術館、私の好きなパンテオンに行った。
ローマに泊まる話も出たけど、宇髄君は私の暮らすフィレンツェに早く行きたいと言うので、ユーロスターで向かう。
ユーロスターの中ではずっと2人で手を繋いだまま肩を寄せ合って、時々キスをした。
フィレンツェのSMN駅から二人でゆっくりと街並みを見ながら歩く。石畳を歩く靴の踵のコツコツという音と、石造りの建物。あちこちにある有名な教会。テラコッタ色の屋根、センスのいいショウウィンドー。町の全てが美術館の様なフィレンツェを私、今、宇髄君と手を繋いで歩いてるんだって。