第17章 ※天馬行空 【宇髄天元】 3 完
・・・宇髄君大きいからすぐ分かった。
制服じゃない宇髄君はすごく大人びて見えた。
いつものくたっとしたパーカーじゃなくて、上質そうな黒のタートルニットに黒のライダースジャケット、少し光沢のある黒のスキニーパンツ。スニーカーとニットの下から少しだけ覗くTシャツの白。全身ほぼ黒に宇髄君のプラチナブロンドの髪とアメジストの瞳が映える。高級ブランドのポスターから出て来たみたい。
あちこちの案内表示をきょろきょろと見ながらスマホを見てる。
走り出したい気持ちを抑えて、そっと傍に行って話かける。
「ピエタまで案内しよっか?」
顔を上げた宇髄君が目をまん丸くして、嬉しそうに笑う。ふいにちょっと頬を赤らめて、視線を逸らす。
「・・・ごめん。会いたくて来ちゃった。困らせた?」
なにこの可愛い子。本当に私に会いに来てくれたの?1万キロの距離を?言葉も分からないのに。
わざと顔を覗き込んで言う。
「・・・宇髄君のすることはいつも可愛いから困んない。楽しんでる。」
「・・・あやちゃんなら許してくれると思った。」
宇髄君は私の方を向くとぎゅっと抱きしめてきた。
「あやちゃん。好き。会いたかった。」
私も宇髄君の背中に腕を回す。
「こんな遠くまでありがとう。嬉しい。」
暫くの間お互いぎゅっぎゅっと腕に力を入れて抱きしめ合う。
「あやちゃん。ここはイタリアだから、みんなの前でキスしても大丈夫?」
「うーん。多分ちょっとならいいんじゃない?」
宇髄君は私の頬に手を添えてちゅとキスをした。ちゅちゅちゅ・・・。何度も啄むような口づけの後、はむっと唇を咥えてくる。少し顔を離して見つめ合う。
宇髄君の瞳は少し潤んでいた。
私の目にも涙がじわじわと溜まっていく。また顔を近づけて何度もお互いの唇を咥える。私の目から涙が零れたのを見てやっと顔を離す。宇髄君が綺麗な長い指で涙を拭ってくれた。
「キス・・・いくらでもできるんだけど?」
「ふふ。そうね。・・・・・あ。こんな時なんだけど・・・」
「何?」
「・・・・・宇髄君・・学校は?」
「土日と祝日二日と二日サボり。」
「・・・・受験生。お母さんとお勉強は大丈夫なの?」
「サボりは勿論ババアには内緒。それ以外は友達ん家で泊りで勉強をするって言ってある。不死川達が誤魔化してくれるって。帰って必死で勉強する。」