第17章 ※天馬行空 【宇髄天元】 3 完
私は学校をクビになってからすぐに、イタリアに住んでいる友達と連絡を取り、ルームメイトを捜している人を紹介してもらった。
窓からフィレンツェのドゥオモが見える街中のアパートの一室。その分少し家賃が高いけど、3人でのルームシェアならなんとかなりそう。
自分の為にも、宇髄君の為にも物理的に会えない距離にいた方が良いと思った。
予想通り、新しい環境は楽しいことも新しいことも多く、すぐに落ち込んだ気分は元に戻った。
・・・宇髄君の方はしばらくは辛いだろうなと思ったけど、私が日本にいなければ、強制的に少しずつ日常が戻って来ているはずだ。
宇髄君からは学校をクビになってから、毎日のように愛情を伝えるメッセージが来ていたが、イタリアにしばらく語学留学すると返信したら、二・三日返信が途絶えた。メッセージが再開したときにはもう愛情を伝える様な内容でなく、描いている絵の画像や絵の描き方の質問が中心になった。それも数日に一回程度。
私は一度も彼に「好き」とは言っていない。
宇髄君が来てくれるから浮かれて家を出たけど、色々と考えていたら、どんな顔で会えばいいか分からなくなってきた。到着ゲートに着いてからしばらく時間があったので、スマホでとりあえず観光に連れて行くならどこにしようか調べることにした。一応メイクも直した。
到着時刻から30分近く経っただろうか。日本人観光客がちらほら到着ゲートに見え始めた。もうすぐかな。