第16章 天馬行空 【宇髄天元】 2
宇髄君からのキス、どうせ断り続けられないよ。
もしかしたら待ってたかも。何されても全然嫌じゃなかった。きっと近いうちにこうなってた。
体を離すと宇髄君はまたちゅっとキスをしてきた。
宇髄君がスマホで連絡が取りたいと言うので、連絡先の交換をした。
この日以降もそれ以前と同じようにお昼を一緒に食べて、放課後に時々来た。宇髄君が絵を描く合間に準備室でたまに手を繋いだり、ハグしたり、キスするだけでそれ以上のことを特にするわけではなかった。
メッセージも時々。美術の事や次の日の質問なんかが来るくらい。
デートに行ったり、私の家に来たいとかの話題が出ることもない。
宇髄君は他に彼女でもいるのかもしれないから、私にすぐに飽きるだろうと思っていたけど、そんな感じも無く、冬が過ぎて、春が来た。
宇髄君は三年生になった。
宇髄君との関係はそのまま。キスがちょっと大人のキスになっただけ。準備室の窓際には毎回カーテンを引かなくていいように目隠し用の棚を置いた。
宇髄君はあれから好きとは言ってこないし、私も言わない。付き合うとかそういうはっきりした関係でも無い。そっと近づいてきて、外から見えない所で指先を絡ませてちゅちゅっとキスをする。キスが終わると2人で微笑む。そして宇髄君は最後にいつもぎゅっとハグ。可愛い。
宇髄君は春からずっと石膏像とか静物のデッサンばかりしている。
美大の入試にはデッサンが多い。宇髄君、進路の希望は経済学部だったような…。
聞いてみたけど、「デッサン描くの好き。」と、はぐらかされた。
宇髄君には新しい友達ができていた。三年になって同じクラスになった伊黒君と、一つ年下で、二年生なのに生徒会長になった煉獄君。休み時間は中庭でよく一緒にいる。楽しそうにふざけ合って笑ってる。
外で怖い人たちと喧嘩した話はもう全く聞かない。友達関係も安定してきてちょっと安心。
宇髄君は校内の美術室以外の場所で私を見ると必ずにこっと笑って手を振ってくれる。私も微笑んで少し手を振る。
…私、この可愛い子を縛ってない?
夏休みが近づいたある日の放課後。下校時刻が過ぎて、美術室はやっと静かになった。片づけをして職員室に戻ろうと思っていたら、校内放送が2回流れた。
「紫天城先生。至急、校長室へ来てください。」
至急呼ばれる様な心当たりは一つだけ。
…バレたな。