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桃紅柳緑【鬼滅の刃】【R18短編集】  

第16章 天馬行空 【宇髄天元】 2


「ほら、あれ。上から二段目。『伊藤若冲』この本棚の右端の方。」

「あ、あれね。でも後で。」
宇髄君がふわりと私の背中に覆い被さってきた。私の胸の前に宇髄君の腕が交差されていて、肩には彼の頭が乗せてある。背中が暖かい。

「宇髄君。やめて。」

「・・・。」

「ちょっと、・・・離れて。」

身体を動かそうとしても、宇髄君は腕に力を込めて逃してはくれない。

「あやちゃん。俺の事可愛いって思ってくれてて嬉しい。」

「・・・何?・・・そんな所から聞いてたの?」

「その少し前位から。開けようと思ったら俺の名前が聞こえた。」

この子本当に高校生?仕方が無いので肩に乗っている頭をよしよしと撫でてやる。可愛いけど本当に手がかかる生徒だな。

「・・・・担任だったからね。あなたの事知りたいと思ったよ。悪い事ばっかりするから。」

「俺の事分かった?」

「・・・甘えたがりって分かった。」

「あー・・正解。」

「・・・最近、宇髄君、あんまり絵を描いてないから、不安定になってんじゃないの?」

「・・・・んー。そうかもしんね。あやちゃんすげぇな。」

私はもう一度頭を撫でてやり、なるべく優しい声で言う。

「ほら。もう終わり。宇髄君。図版取って。」

「ん・・・分かった。」
そう言うと宇髄君は素直に体を離した。この子は甘えたいなら甘やかしてやると良いのかな?
宇髄君は図版を取って、中をペラペラとめくって見ている。私は自分のスマホでさっき言った他の日本画家を検索して見せてやる。

「ほら、片岡球子は『斬新』で、田淵俊夫は『繊細』って感じじゃない?若冲は『鮮やか』。この赤の使い方が好きだな。こんな色になるまで何回色を重ねたんだろう・・と思って調べたら、すっごく高くて良い絵の具をすっごく高くて良い絹に薄塗りしているんだって。若冲お金持ちだった。」

私は少し喋りすぎたかと思って、宇髄君の顔を見た。宇髄君は私の方を見ていた。
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