第16章 天馬行空 【宇髄天元】 2
松本先生が出て行って、ドアが閉まるのを私と宇髄君は静かに見守っていた。
ドアが閉まって、足音が遠ざかるのを聞いてから、宇髄君が話し始めた。
「松本、どうしたの?」
何から話せばいいか分からなかったのと、もう考えたくなかったので適当に誤魔化す。
「・・・良く分かんない。でも宇髄君いいタイミングだった。」
「ふぅん。」
宇髄君はちょっと口を尖らせて不機嫌そうな顔をする。え?怒っちゃった?なんで?まぁいいや。
「宇髄君はホントに何しに来たの?」
「・・・何か画集を借りに来た。」
「いいよ。何がいい?彫刻?絵画?日本画も面白いよ。」
「日本画は良く知らねぇな。あやちゃん、日本画は誰が好き?」
「片岡球子、田淵俊夫、・・・古典なら若冲かな。私もそんなに詳しいわけじゃないけどね。日本画。」
私は、大きな本棚を見ながら今言った作家の図版を捜す。若冲あたりならありそう。
宇髄君が本を探す私にわざと横からドンとぶつかってくる。何だ?と思って、宇髄君を見る。宇髄君もこちらを見ていた。
「あやちゃん、松本が好きなの?」
「え?そんな風に見える?好きなわけないじゃん。」
そんな事かと思って、また本を探し始める。
「じゃあ何ではっきり断らねぇの?」
「・・・宇髄君、聞いてたの?」
「俺、耳良いんだよ。」
「・・・・だって、同僚だよ。はっきり断ると明日から気まずいじゃん。あ。若冲あった。ほら、取って。」
「どれ?」
宇髄君は私の後ろに立って私が指さす方を見る。