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桃紅柳緑【鬼滅の刃】【R18短編集】  

第15章 天馬行空 【宇髄天元】 1


宇髄君は差し色の使い方がうまい。サーモンピンクの花にはターコイズと少しのオレンジ、紫。ニゲラにも同じ紫とオレンジ。
他の授業ではつまらなそうに椅子の背もたれにもたれて座っているのに、絵を描き始めるときちんと座って描く。美術室の椅子には背もたれが無いからかもしれないけど。
かなり細かいところも丁寧に描いている。宇髄君が描いている所を器用だなと思いながら後ろから見ていると、くるりと振り向いた。慌てて謝る。
「ごめん。宇髄君。気になっちゃった?」
「別に。なぁ、紫天城せんせ。この花にこのターコイズどう思う?」
「いいと思った。宇髄君の出している花のピンクに生える。」
「だろ?可愛いなこの花。さっき切ってたやつだろ?」
「そう。やっぱ目が合った?宇髄君、授業中よそ見してちゃダメだよ。」
「ニヤニヤして鼻歌歌いながら花壇にいるあやちゃんの方が悪いと思うよ俺は。」
宇髄君が私の方を見てにやりと笑う。
やっぱり見られてた。恥ずかしくなった私は、手で口元を隠し、「歌ってないけど。」と言いながら、別の生徒の所へ指導しに行く。その後、少し時間を置いて宇髄君を見たら、フードから覗く横顔はなんだか嬉しそうだった。


授業が終わり、次はお昼休み。
宇髄君はまだ美術室にいる。花を明日の午前中まで使うと言ったら、授業の後ずっと花の茎の処理を手伝ってくれていた。
で、その後も何故か美術室にいる。
「あやちゃん、俺、昼ここで食べていい?」
「いいけど。いつもの取り巻きの女の子たちは?」
「それが面倒臭ぇから。」
「・・・もてるのも大変だね。」
宇髄君は勝手に準備室にある画集を持って来て眺めながら昼休みを過ごした。見える位置で私も昼ご飯を食べてから、パソコンを開いて授業の準備や書類づくりをした。時々話しかけてくるからそれに答える。

それから、宇髄君はちょくちょく昼休みには顔を出すようになった。どうやら懐かれてしまったようだ。


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