第14章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】4 完
4月
辞令交付式
私は黒のスーツに白いシャツを着て、中学校に赴任するための辞令を貰いに市庁舎に来ていた。
公立の義務教育の職員は初めての自治体に異動になったり採用になったりすると一旦集められて辞令を貰う。
私は大学を卒業したら地元に戻るつもりで地方の採用試験を受けて合格した。本当はインターハイ優勝を目指しての部活指導がしたかったから高校が良かったけど、公立高校の社会科の募集は無かった。
教育実習が終わってから半年ほど実弥さんと付き合った。
思っていた以上に優しい良い人だった。
泊まりに来てくれた時は、よく晩御飯や朝ご飯を作ってくれた。本当に可愛い笑顔を沢山見せてくれた。
杏寿郎よりも先に会っていたら一生この人と一緒に生きていきたいと思えるような人だった。
でも、私は実弥さんとはセックスができなかったのだ。軽いキスは勿論できたし、深いキスもできた。上手だった。
でも、実弥さんの肌と私の肌が触れるとぞわぞわと悪寒が走った。肌に触られるのも駄目だった。そんな私を嫌がらず、抱き締めるだけで我慢してくれていた。何度も試してみたけど、軽減することは無かった。最終的に、
「煉獄がそれだけ好きで忘れられないなら、煉獄の所へ行け。・・煉獄もあやが好きみたいだからな。幸せにしてもらえ。・・妹は俺が説得する。」
と言ってくれて別れた。「妹さんには何もしなくていい」とは言っておいた。
メッセージは今でもよく来る。いつも私を心配してくれている文面と、脈絡の無いなんだかほのぼのした画像。結構心の支えになっている。
実弥さんに頑張れと言われたけど、杏寿郎とは連絡の取りようが無いので、仕方なしにそのまま。
もうばったり会うことも無いまま私は地元に帰った。
母が1人で暮らしているから、最初からそうするつもりで大学に行っていた。
東京から1時間半ほどの一応関東というくらいの自然も豊かな地元の中規模の都市。
杏寿郎の事は毎日思い出す。実習中の事も、前世の事も。今でも大好きだ。きっとこれからも大好き。大好きなまま離れたからそうなんだろう。
私はそんな事を考えながら市庁舎の大会議に行く。辞令を貰いに多くの学校職員が来ていた。
・・あれ?神様、やっと、私の順番が来た?