第14章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】4 完
土曜日の夕飯の後、食器を洗ってから寿美にダイニングテーブルに着いてもらう。
そして頭を下げる。
「寿美、申し訳ないが、好きな人ができた。離婚して欲しい。」
「薄々わかってた。例の大学生だよね?でもお兄ちゃんと付き合っているんでしょ?」
「あぁ、そうだ。」
「兄と付き合っているなら、どうにもならなんじゃないの?」
「どうにかしたいわけじゃない。ただ好きなんだ。その人が好きなのに、君といるわけにはいかない。」
「そうですか。でも、私はあなたが好きなので嫌です。」
「申し訳ないが、もう君とキスをしたり、セックスをしたりはできない。」
「しなくていいです。でも、離婚は嫌です。」
「分かった。勿論、君の意思を尊重したい。俺が急に勝手なこと言っているわけだからな。君が俺に対して愛情が無くなるまで待つ。」
「君が嫌いなわけではないので、キスとセックス以外は君の望むようにする。」
寿美は表情の無い顔で聞いていたが、俺の項目が全て書き込まれた離婚届けを出したら、はらはらと泣いて半分に破った。俺の方を向いて両手を広げたので、抱き締めたら大きな声で泣き始めた。
俺のしたことだ、時間がかかっても償う。
寿美は2カ月ほど不安定だった。怒ったり、泣いたり、謝ってきたり…。
でもその後は俺があやと会う以前の寿美に戻った。本当にキスとセックス以外はいつも通りに生活をした。
俺は3月で仕事を辞めた。何となく居づらくなった。そのかわり様々な校種の教員のアルバイトをしてみた。
離婚の話を俺がしてから一年ほど経って寿美は離婚届に判を押してくれた。
「兄からあやさんとの事を聞いた。仕方が無いとまでは言わないにしても、…やっと、諦めがついた。」
「杏寿郎さんの事が大好きだから、すっごく傷付いた。でも、あなたに会わない方が良かったとは思わない。少しの間だったけど、一緒にいてくれてありがとう。お互い次の結婚を頑張ろう。」
と最後に言われた。俺は寿美に本当にひどい事をした。
それから半年ほどして寿美から好きな人ができた。と報告を受けた。
これで俺がすべきことがまずは一つ完了した。
次は…あやを探しに行く。もうあのアパートには居なかった。
縁が無かったなら仕方ない。縁があれば必ずまた会えるはず。
…離婚したら随分と気分が軽くなった。