第2章 ※恵風和暢 【不死川実弥】2 完
「・・・実弥、やめて。その気がないのに優しくしなくていい。」
「私、あなたの事が好きだから、後で傷つく・・。」
ゆっくりと実弥の目を見る。
「乱暴にされるくらいでいいの。勘違いしなくて済むから。」
「乱暴にするなら、どうぞ。いくらでも。・・・気持ちよかったし。」
実弥と目を合わしたまま、袴の紐をほどき始めた。
「オィ、待て、待ってくれ。」
あやの手を止める。
「・・・くそ」と下を向いた後、観念したようにあやの目を見る。
「・・・あやサン、ちゃんと言うから聞いてくれ。」
「俺も、あやサンが好きなんだ。でも、もっと強くなりてェのに、あやサン見ると優しい気持ちになっちまう。それに・・・いつか、匡近みてぇに・・・死なせちまうのが怖くて変な態度取っちまった。」
「・・・傷つけて・・悪かった。最低な事しちまった・・・すいません。そんな顔させたかったわけじゃねぇのに・・・。」
あやは大きな灰色の目でじっと実弥を見つめる。
吸い込まれるようなその目に実弥が一瞬言葉に詰まる。
あやは、小さく溜息をつくと、灰色の瞳をゆっくり閉じた。静かに実弥に口づけをし、また実弥の目を見る。
「・・ほら。あなたの方がバカだったでしょ?」
「大丈夫。怒ってないよ。」と小さな声で言い、優しく微笑む。
「さぁ。もう1回口づけからやり直してみる?」
「・・・あやサン。・・・あんた、俺に甘すぎじゃねぇ?」
実弥は少し困ったような泣き出しそうな顔で言う。
「師範に実弥の面倒見てくれって言われたからね。」
「素直じゃなくて、面倒臭い弟弟子だけど、成長を見守るしかない。好きになっちゃったしね。」
「・・面倒臭いって何だよ?」
「あら。自覚が無い。」
ふはっと実弥が下を向いて笑い、顔を上げ、真剣な顔をする。