第13章 炎炎 【煉獄杏寿郎】3
次の日
この日も朝練の後、あやと教官室へ行き職員室へ。打ち合わせの後、俺は空き時間であやは他の実習生の授業を見に行った。
社会科準備室で仕事をしようと廊下を歩いているとすれ違った宇髄に驚いた顔で呼び止められた。
「おい、煉獄・・・お前・・・ちょっと準備室に一緒に行くぞ。」
「ん?どうした?」
「いいから。」
社会科準備室に入るとドアを閉められた。
「お前・・・口紅ついてるぞ。」
「む・・・。」
俺は慌てて口を拭う。
「・・・・煉獄。俺は唇についてるって言ってねぇよ。今、何でお前自分の唇を拭った?」
「簡単に引っかかってんじゃねぇよ。・・・なんかおかしいと思って声かけりゃこれだ。何もついてねぇよ。」
・・・やられた。
宇髄はじっと俺の目を見ている。
朝、出がけに寿美とキスをしたと言うか?
何となく口を拭ったと言うか?
・・・いや、こんなに沈黙が長いということが肯定を意味している。宇髄の出方を見よう。
「・・・・。」
「煉獄先生は学校で何やってんの?」
宇髄は額に手を置いて、ため息をつきながら下を向く。
「・・・・すまん。」
宇髄は顔を上げると、手をすっと伸ばして俺の肩のあたりから何かを抓む。
髪の毛だ。俺の金の髪ではなく、茶色のあやの髪。
それを見ながら宇髄が続ける。
「・・・・あやと。キスを唇に。・・髪の毛が肩に・・・と、いうことは抱き締めちゃった?この時間にもうついているってことは朝練の後か。・・・そーいやぁ、剣道場に教官室があったな。」
・・・ぐうの音も出ない。大正解だ。
「・・・君は探偵にもなれるぞ。」
俺の言葉を聞いて、宇髄は俺の目をじっと見ながら目の前でぱっと手を開いて抓んだ髪の毛を落とす。
「煉獄ゥ・・・俺は妻が三人もいたような男だからお前を咎めるつもりはねぇ。・・・だが、お前は大切な奴だから言うけどよ、・・・お前、不器用だからこういうの向かねぇよ。」
「昨日もあやは泣いて帰ったが、いつもと少し様子が違って何か悩んでると思ったら・・・そーいう事ね。」
「今思うとちょっと色っぽくなってたな。・・お前との関係が始まっちゃったってことか。」
「折角、あやはそーならない様に我慢してたのによ。」