第13章 炎炎 【煉獄杏寿郎】3
次の日は部活が休みだったので、寿美の買い物や行きたいところに付き合った。
手を繋いで、荷物を持って、優しく微笑んで・・。それなりに楽しく会話もしたと思う。
頭の中ではあやが教育実習に来る最後の一週間を、どうやって過ごそうかと考えながら。
夜は・・・もうしばらくは寿美と肌を重ねる気にならないので、期末テストを作りながら寿美が先に寝るのを待った。
月曜日
剣道部の朝練にはあやの方が先に来ていた。俺を見てにっこり笑う。
「煉獄先生。おはようございます!」
「あぁ、おはよう!朝から元気で感心だな。」
あやの笑顔を見てほっとする。
30分ほどの朝練が終わり、生徒を剣道場から教室へ送り出す。生徒たちがいなくなった剣道場は一気に静かになった。あやと俺は小窓を閉めて回る。
出入り口の正面には大きな両開きのドアがあり、そこを閉めてから二人で反対方向に小窓の施錠を確認しながら回る。同じくらいのタイミングであやと出入り口付近に来る。
剣道場には・・・出入り口のすぐ横に教官室があるのだ。
あやの手を引いて教官室へ入る。
バタン・・・ドアが閉まった音が合図だ。
ぎゅっと抱きしめ合い、キスをする。
啄むようなキスから深いキスまで。
8時20分の予鈴が鳴るまで何度も何度も。大体10分ちょっと。
今日は俺があやの腰に腕を回して、あやは俺の肩に腕を乗せて、頭を抱きしめられながら。
予鈴が鳴ったら、お互いの身だしなみが整っているかチェックする。そして剣道場に施錠をして雑談をしながら職員室へ向かう。
8時30分の朝の打ち合わせに間に合うように席に着く。
放課後生徒が帰った後は社会科準備室。
あやを先に部屋に入らせて、俺がドアを閉める。一応ドアから死角になる所でキスと抱擁。長い時間籠るわけにはいかないので、こっちも10分程度。10分経つと俺がドアを開けて飲み物を買いに行き、そのままドアは開けておく。
ドアが開いている時は、ドアから死角になっている所に座り、素知らぬ顔で机の上に置いた手の指先だけ絡める。
教官室と社会科準備室の中では視線を絡めるが、そこ以外は必要以上に視線を合わせない。
・・・この朝夕合計20分の密室の背徳感は楽しめるようになった。