第12章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】2
俺はあやが座っている場所の机の角を挟んで隣に椅子を動かして座った。
俺は机の上に出しっぱなしだった書類を簡単に揃え、机の端に片づけながら雑談を始める。
「あや、君は友達と食事に行ったんじゃないのか?」
あやも、鞄の中から実習用のノートを出しながら答える。
「食べ終わって、なんだか家に帰りたくなかったから、授業準備しようと思って。」
俺は綺麗になった机に無造作に手を置いた。あやの顔を覗き込んで少し揶揄う。
「真面目な学生だな。きっと担当の煉獄先生の教えがいいんだろうな。」
あやは俺が置いた手の上に自分の手を重ねながら、俺の顔を覗き込んで悪戯っぽく笑い、言い返してくる。
「そうなの。でも・・・煉獄先生は優秀だけどセクハラをしてくるの。抱き付いてきたりキスしたり。」
俺も考えている振りをして答える。
「セクハラは・・・相手が嫌がってる場合じゃないのか?」
あやは重ねた俺の手を取り、手の平と平を合わせ、指と指を絡ませて手を繋ぐ。
「・・・嫌がってないと思ってるの?」
少し笑いながらあやの顔が俺の方へ近付く。
「嫌なのか?」
俺もあやの顔に少し近づく。
「・・・・嫌じゃない。煉獄先生にならもっとしてほしい。」
ふふふと笑いながらあやが俺の唇にまたちゅっとキスをする。
俺もあやの唇を自分の唇で数回挟む。あやも同じように俺の唇を自分の唇で挟んでくる。お互いの顎に指を添え、額と額をこつんこつんと当てながらキスを繰り返す。キスの合間には頬と頬をすりと合わせたり、鼻先と鼻先を付けたり、猫がじゃれ合うように顔と顔をくっつけ合う。お互いの肌の香りとぬくもりを感じる甘ったるい幸せな時間。
俺たちはこの口付けが好きだった。
「私、杏寿郎のこの丸いおでこが好き。」
「俺はあやの柔らかい頬が好きだ。」
くすくす笑いながらお互いの言った場所にキスをしてまた顔をピタピタとくっつけ合う。