第12章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】2
「寿美、どうした?」
「・・・ううん。今日はいつまでお仕事かなと思って。」
チラと時計を見ると三時過ぎ。少しずつまた心臓が五月蠅くなってくる。
「4時前には出ようと思う。」
「今は職員室?」
・・・一瞬どうしようかと思ったが、正直に答える。
「社会科準備室にいる。」
「実習生の女の子は?」
寿美の鋭い追及に、緊張した気持ちが限界を超えた。
さっきまでの慌てていた気持ちがスウと治まり、やましいことは何もない、言える範囲で言えばいいと冷静になる。
やましい事ばかりなくせに・・・太々しいとはこのことだなと思いながら。
あやは物音を立てない様にそっと机の方へ行き、じっとしている。寿美の声が漏れ聞こえるのか、時折驚いた顔をしてチラとこちらを見る。
「・・・さっき来たぞ。」
「・・・そう。元気になってた?」
「・・・うーん・・分からない。普通の様子に見える。・・・・どうした寿美。焼きもちか?」
「・・ふふふ・・バレた?女子大生と一緒なんて心配。私の旦那様はかっこいいから。」
「そう思っているのは君だけだと思うぞ。」
「・・・だと良いけどね。」
「・・・ごめんね。邪魔して。また帰る前に連絡してね。」
「あぁ。承知した。」
プッと終了ボタンを押す。顔を上げると、あやが申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。
「・・・杏寿郎。・・・ごめんね。」
「・・・君が謝るな。俺の方こそ嫌な思いをさせてすまない。」