第12章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】2
俺は、あやの頭を自分の肩口に当て、ぎゅっと抱きしめる。
「天国で会えるかと思ったけど、・・・無かった。」
「・・・確かに、天国なんて所は無かったな。気が付いたら今生だった。」
「・・・私も。」
「ねぇ、杏寿郎。死ぬ時は痛かった?」
「・・いいや。ゆっくりと脱力していく感じだった。最後の最後には君の笑顔が浮かんだよ。・・・君は痛かったか?」
「ううん。あなたと同じ。ただゆっくり力が抜けていった。私も最後には杏寿郎の笑顔が思い浮かんだ。やっと会いに行けるって・・痛いどころかむしろ幸せな気持ちだった。」
さっきは我慢できたが、もう我慢ができなくなった。
「あや・・・。君にキスがしたい。」
あやが、肩口から頭を離し、俺の方へ向いた。俺の好きな、目を細めた眩しそうな笑顔で可愛く首を横に振ると言った。
「・・杏寿郎‥ダメ。」
少し体を起こすと、もう一度微笑む。
「・・・今度のキスは私からする。」
あやは俺の顎を持つと、少し上げ、少し唇が開いた所をペロと舐めると唇を数回重ねる。「ほら、これで私も同罪。」と小さく言うと、ちゅるりと舌を滑り込ませてきた。
舌の横や舌の裏、上顎をあやの舌がゆっくりと責めてくる。クチュクチュと水音が響き、あやの甘い吐息と甘い唾液を味わう。時々薄く目を開けてお互いの惚けた顔を見る。
前世ではあやの方がキスがうまかった。
ブーーーッ ブーーーッ
腰のポケットに入れた携帯が振動した。
とろりとした顔をしていたあやは、パッと跳び起きて俺の上から降りる。
俺は大きく溜息をつきながら携帯を見る。・・・・・・寿美。
・・・・・勘が良すぎる。
・・・出ないと・・怪しまれる?
大きく息を吸い、ゆっくり吐きながら寝そべっていた体を起こし、あやをちらと見ると「私は大丈夫だから出て。」と言う。
仕方なしに通話ボタンを押す。