第11章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】 1
しばらくの沈黙の後、伊黒が口を開く。
「・・・・初日からだ。毎日お前が帰った後に30分くらい泣いてから帰る。今日は冨岡が一緒にいる。」
「・・何故泣いてる?」
「・・・何故?・・俺の口からは言えない。・・しかし、分かってるはずだ。」
・・・俺は両手の拳をぎゅっと握った後、ゆっくり開くと両手で顔を隠し、大きく息を吸い込んだ。
なんてことだ・・・。奥歯を噛みしめて、何度も大きくため息をつく。
「煉獄、あと一週間だ。その気持ちは出さずに耐えるんだろう?」
「・・・俺は、・・どうしたらいい?」
「・・お前で答えが出ない事を俺に聞くな。ほら、もういいらしいぞ。」
伊黒がスマホを見ながら言う。俺は一度大きく深呼吸をして準備室に続く廊下に出た。廊下の向こうに涙を拭きながら歩くあやの背中が見えた。咄嗟に走り出そうとして、宇髄に肩を掴まれる。
「煉獄、半端な事すんじゃねぇよ。何であやがお前に気づかれない様に泣いているか考えろ。」
「・・・・そうだな。すまん。」
準備室から鍵を取り出し、職員室を出た。職員玄関を出て駐車場へ行く角を曲がると俺の目からは涙が一気に溢れた。少しの間手で顔を隠し、声を押し殺して泣いた。俺も平静を装っていただけなのだ。