第11章 ※炎炎 【煉獄杏寿郎】 1
いつもよりも少し遅くなってしまったなと思いながら、自分の荷物を片付け、帰り支度をする。
あやはこれからもう少し社会科準備室に残り、指導案を直して授業準備をするらしい。「あまり遅くならない様に帰るんだぞ。」とあやに言うと、あやは微笑んで「はい。お疲れさまでした。」と返してきた。
俺は微笑み返すと、社会科準備室のドアを静かに閉じる。
教頭に簡単に今日の教育実習の報告を済ませると、「お疲れさまでした。」と残っている教員に挨拶をする。今日は車で来たんだったと思い出し、車が停めてある駐車場に向かった。
鞄の中から鍵を探す。・・・見つからない。
ふと、準備室の机の抽斗に仕舞ったことを思い出す。
急いで取りに戻る。
職員室に入ると、宇髄と伊黒が「え?」という顔をする。「鍵を忘れた」と言いながら、準備室に向かおうとすると、「ちょっと待て」と宇髄に止められる。俺は訝しげに宇髄を見る。宇髄が伊黒と目を合わせて、観念したように言った。
「・・・今、あやが準備室で泣いてるんだわ。煉獄、ちょっと待ってくれるか?」
それを聞いて心臓が跳ねた。宇髄は準備室に向かう。
伊黒がそれを見て立ちあがり、「ちょっとこっちで待つぞ。」と言うと自動販売機の所へ連れ出される。
俺の心臓はもうずっと早鐘を打っている。
泣いているのは当たり前という様な2人の会話に違和感を覚え、今日が初めての事では無いと思考が行き着く。
聞くと後悔すると思いながらも伊黒に恐る恐る尋ねる。
「・・・いつからだ?」
「・・煉獄、聞かない方が良い。」
「・・・もう知ってしまったのだから、教えてくれ。」