第8章 living for love 【七海建人】前編
私達はすぐ近くの公園のベンチに並んで腰をかけている。
昼間は子供たちの声で賑やかな公園も、夕方五時を過ぎると、なんだか物寂しい雰囲気が漂っていた。
七海さんが前を向いたまま、ポツリと言った。
「先ほどのモノは、呪霊です」
「ジュレイ?」
「えぇ。簡単に言うと“呪い”の一種です。
それと一瞬だけですが、私にも貴女と同じように、同僚の方に見えました。だから祓ったのを見て、あんなに驚かれていたのでしょう?」
呪い……?あれが?それより
「はい。ほんっとーに、人殺しだと思いました。
ごめんなさい。助けてもらったのに」
「まぁ、どちらにせよ驚いて普通です」
「そうですよねっ!?驚いて普通ですよねっ!?あーーーもう、ほんっとーーーにビックリしたんですよ!?」
興奮気味に話す私を見た七海さんが
「はは、すいません。私には当たり前の事でしたので」
カチャッと小さな音をたて眼鏡を外し、軽い笑い声を上げた。
そして、私の頭を軽く、ポンポンと撫で
「ビックリさせましたね。申し訳ない」
「……」
周りが暗くて良かった。
不意打ちの笑顔だけでも焦ったのに、優しく頭を撫でられ
私の顔はきっと真っ赤に染まっている。