第8章 living for love 【七海建人】前編
「いや、ほら、貴女まだ食べたそうですし、時間も……いや、もう遅いですか?」
少しだけ焦って言う七海さん。さっきからずっとくま吉を片手に抱いたままで。
「いえ、もう少し一緒に……」
「……」
って、私!何言ってるの!?デザート食べたいかどうか聞かれただけで!!!
七海さん、黙っちゃったじゃない!!!
「そうですね」
少しだけ照れたような表情の七海さんが、こちらを見ている。
前から思ってたんだよね、、、
凄くキレイな顔をしてる、って
「今日の話じゃなくて、七海さんの事を聞いていいですか?」
「えぇ。あまり楽しい話はないかもしれませんが」
二人、並んで歩きだした。
歩調は私に合わせてくれている。
だけど、七海さんの足がピタリと止まり、思わず顔を見上げたら
「すいません、やっぱり この くまは、貴女が持っていてくれませんか?」
「わ!そうですよね!ごめんなさい!!!また、帰りは袋に入れてお渡ししますね」
「助かります。私が一人でこれを抱えて歩いていたら、かなりの危険人物だと思われそうで」
頭の中で想像したのは、七海さんがくま吉を抱えて電車に乗っているところ……
「あーーー通報レベルですね」
「でしょうね」
私達は笑いながら、遅くまで開いているカフェに向かった。