第6章 Femme fatale 【五条悟】後編
「何、それ?」
野薔薇ちゃんが聞いてきた。
「これ、今日は虎杖君の友達や先輩も来るって聞いてたから、焼き菓子焼いてきたの」
「焼いてきた?パン屋の店員なんでしょ?」
野薔薇ちゃんの質問に
「うん。作ったりもするんだよ。今日はオーブンが空いてる時に少し借りたんだけど……
五条さん、よくパン、持って帰ってない?店に来た時は、買い占めてるし。試作品で作ったのも渡してるんだけど」
ふと横に座った五条さんを見ると、遠い向こうを見ている。そして、何故か虎杖君も……
「オイ、お前ら」
「バカ目隠し」
野薔薇ちゃんと真希ちゃんの声が低く響いた。
「こないだ1つだけあったデニッシュは、ちゃんの店のヤツか」
「私が見たのは、塩パン1個だったな」
「いやぁー高専に着く前につい、食べちゃうんだよーでも、残りは食堂に置いてあったでしょ?」
「五条先生が持って帰ってくるの知ってるから、俺、すぐに食堂に……でも、置いてあるの自体、すでに何個かだけど……」
五条さんの後に話し出した虎杖君の声が小さくなった。
「女子高生の腹の虫舐めんなよ!お前らこの焼き菓子は、ゼッテー食うな!!!」
「ツナツナ」
ネタ以外口にしなかった棘君が、賛同の意なのか頷きながら言った言葉は、おにぎりの具だった。だけど、その後ろでボソッと
「いや、俺、1回も食ったことないけど」
悲しそうに呟いた伏黒君の頭を、パンダ君が優しく撫でていた。