第5章 Femme fatale 【五条悟】中編
「ほら、怒ってる」
「……」
って、今の静電気もなかなかキタんですけど。軽く睨んでも素知らぬ顔で話を続ける五条さん。
「呪いはね見えないんだ。普通の人には。だけど、危機的状況に陥ったりすると見えたりする」
「へーーー」
「だからさっきの、かなり危機的状況だったけど、君には同僚に見えた。しかも会話も出来ていたんだろう?」
「まぁ、少しトンチンカンな感じでしたけど……あ!そう言えば、五条さんと七海さんの悪口は言ってたのに、元カレの悪口は言ってなかったなぁ」
「なんて悪口ー?」
たしか、威圧感のある黒づくめの目隠し……七海さんのことは……
「まぁ、別に悪口でもないです。本当の事ですね」
「あっそ。想像つくからいいや。それより、あの状況でそんな呑気な幻想見えてるの、やっぱ何かの術だと思うんだけどな」
「そんな危機的状況でした?」
「まぁ僕には全く大した事、ないんだけどね」
「ふぅーーーーん。あ、そうだっ!助けてくれてありがとうございました」
そう言えばお礼を言ってなかったな、と思い頭を下げた。
「それだけ?」
「えっと、家にも送っていただき、ありがとうございました」
もう一度下げた。
「それだけー?」
「他に何かあります?って言うかー どうして私に構うんですか?五条さんなら、選び放題なんじゃないですか?」
「まぁねーほら、僕、見た目いいからさー」
「……」
大分、変わり者のようですけど。と、言う言葉は呑み込んだ。
「君だからだよ」