第5章 Femme fatale 【五条悟】中編
「私が産まれた時には、曽祖父しか居なかったんですが、母が女の子を産んで、まぁ私の事なんですけどね。曽祖父は酷く心配していたらしくって」
黙ったまま相槌だけをうち、話を聞く五条さん。
「曽祖父が亡くなるときに『この子の力は、俺が持って行く』って言ったらしくて……
ただ本当に私が小さな頃の話で、今さっきです。思い出したのも」
「みたいだね。凄く怒ってるよ。ひいおじいちゃん」
クマ吉を指差す五条さん。
「曽祖母が、かなり力の強い呪術師だったらしくて、曽祖父はそれを見るのが辛かった、ってよく言ってたようで」
「うん。だから、どうしても君にそんな辛い思いをさせたくなかったんだよね?」
「そうみたいですね。すごく優しい人だった事は良く覚えています」
私はクマ吉を膝に抱くと、そっと頭を撫でた。
「今もね、本当はひいおばあちゃんは外に出たがってるんだよ。それを止めているのが ひいおじいちゃん。
黙って見守るってさ、当事者よりもずっと辛いんだよね」
「……そうなんですね」
私はギュッとクマ吉を抱き締めた。そして大きく息を吐いて
「なので私には五条さんの言う、呪力も呪術も使えません。だからお役には立てないと思います」
きっぱりと言い切った。なのに
「ははっ。そうとも限らないさ。まぁ、君のひいおじいちゃんとひいおばあちゃんは、僕のことは お気に召さないみたいだけどね」
五条さんが私の膝の上にあるクマ吉を撫でると、またバチッ!!!と大きな音をたて静電気が発生した。
「おっと!」
「いたっ!!!」