第4章 Femme fatale 【五条悟】前編
「シャワーでも浴びてくれば?俺はこれ拭き取ってるからさー」
そう言って腰の抜けた私を部屋に下ろすと、近くにあったタオルを奪うように取り上げた。
会って二度目の男性を家に上げるだけでもどうかしてるのに、その人を部屋に置いてシャワーなんて ありえないっ!それに
「とりあえず、洗ってきます」
家に着いて安心したのか、ようやく腰に力が入ってきた。
「そぉ?いいのに僕の事は気にしなくて」
ニカッと笑う五条さん。
「しますよ、普通」
「“普通”ねぇー。あ、僕、あったかいコーヒーが飲みたいなぁー砂糖多めで」
「あーーー、あんなに砂糖入れたら身体に良くないですよ?」
先日、パンケーキのお店で大量のスティックシュガーを入れていたのを思い出した。
「大丈夫、大丈夫ー それより、やっぱさっきの説明って、いる?」
汚れを拭いたタオルをゴミのように指先でつまみながら、五条さんが聞いてきた。
「はい。でも、その前に1つ質問があります」
そっと手を上げて言うと
「はい、ちゃん!」
ノリのいい五条さんは、授業中に手を上げた生徒を呼ぶようにハキハキと返事をしてくれた。
「さっき言ってた“術”って、“呪術”の事ですか?」
「さっすが~~正解っ!」
タオルをゴミ箱に投げつけたあと、頭の上に手で大きな丸を作り、
「ははは……やっぱ、ですよねぇ~~~」
「ねぇ~~~」
ニッコリと私の言葉に合わせてきた。
「とりあえず、コーヒー淹れましょう!話はそれからで!」
「いいねぇ~甘いパンもあるといいなぁ~~」
「晩御飯前ですよ?」
「大丈夫、大丈夫~~~」
……確かに、スラッとしてるけど
「年取ったら、出ますよ」
その言葉に少し斜め上を見た五条さんが
「デザートにとっておくかー」
また、ニカッと笑った。