第4章 Femme fatale 【五条悟】前編
「ははっ!確かにそんなんじゃ、どこの店にも入れないねー」
楽しそうに話す五条さん。だけど、私より近くにいたはずなのに……なんで少しも紫色が付いてないのっ!?
さっきから頭の中が疑問符と感嘆符だらけの私がフワッと宙に浮き、思わず「うわっ」と声が漏れた。
「さ、行こうか?」
五条さんが、私を!私をっ!!!“お姫様抱っこ”してる!?
「ちょ、ちょっと」
「えーだって歩けないでしょー?ちゃん」
「で、でも、重いっ!重いです!」
「ははっ、こんなの軽い軽ーーーい」
そう言って長い足でスタスタと歩いて行く。
本当に軽そうに歩いて行くんだけど、ツーーーッと私の目の前に紫色が垂れてきたので、
思わず、グイッと五条さんの胸元で拭いてしまって、
「うっそ、付けるそれ……?」
「あ、垂れてきたから、つい。なんか手で触りたくなくって」
「あーあー、そんな事する君には こうしよう」
「へっ!?」
また身体が浮いた!?と、思ったら今度は、肩で荷物を担ぐようにされてしまった!?
お姫様抱っこも恥ずかしかったけど、これはこれで、また恥ずかしいっっっ!!!腰が抜けて力が入らない分、腕をバタバタと動かすと
「はい、動かなーーーい。じっとする。落とすぞーーー」
「……」
なんだか冗談には聞こえなくて、大人しくした。