第3章 it was fate
「ところで、五条さん」
「何?」
「あまりパンをたくさん食べると、皆の土産になりませんよ?かなり怒ってましたので」
「……」
僕はもう一つ袋から出しかけたパンを、無言でそのまま袋に戻した。
学園長あたりはいいんだけど、かわいい生徒達の怒りはあまり買いたくないからなぁ~
ただ
来るべき時に備える。
それが僕の本音だ。
僕に狙われたちゃんには、申し訳ないけど……
「このチャンスは、みすみす逃せない」
「そうですか」
前を向いたまま、やはり澄ました顔で歩く七海。
そして前を向いたまま
「ですが、選ぶのは彼女です」
突然、足を止めて言った。
「だね」
珍しく感情を顕にする七海に少しだけ、ほぉーーーんの少しだけ驚きつつも、僕は平然と返事をした。
まぁ、まさか ちゃんは、僕と七海がこんな話をしてるなんて考えもつかないんだろうなぁー
そんなことを考えると、ついつい口元が緩む。
「三十路手前の男が、ニヤニヤしているとキモいですよ」
「なんだよー!キモいとか言うなよーーー!!!」
「本当の事です」
七海とのこの時間が好きだ。
高専の頃を思い出す。
楽しくてだけど
胸が苦しくなる高専時代。
でも俺は前を見るよ。常に
そう
明るい未来を