第2章 bump into him
「怒ってなどいません。そういえば、あの“惣菜パン”はカスクートと言う名前でしたね」
ふっ、と笑った七海さん……
「ふふ、名前あるの知りませんでしたか?」
私も安心して笑いが零れた。
「ええ。特に気にかけたことがありませんでしたので。これも久しぶりですね。1つ頂きます」
そう言ってカスクートを手にとり、レジの前に置いた。
「あ、七海~これも一緒に買ってよ」
そう言って、トレーに山盛りの甘い系のパンを乗せて立っている五条さん。
「……」
無言で睨みつける七海さんを五条さんがスルーし、今度は私の方を見てニッコリと笑ってきた。
「パンケーキのお礼にこれ、どお?」
「多すぎじゃないですか?」
何個乗ってんの?それ?ってぐらい山積みだ。
「だって今度、お礼にって」
「いや、いくらなんでも多いですよ、それ」
「えーーーっ、ほら、皆が俺を待ってるって言うから、皆の分もさぁー」
「じゃあ、これも全て貴方が支払って下さい」
七海さんが自分のカスクートも、五条さんに付き出した。
すると五条さんがニヤリと笑い
「俺に借り作ると高いよ?」
「いえ、探しに来た私に対する“礼”でしょう。これは」
「えええーーーっ!!!何、それーーー」
「ほら、早く行きますよ。それ、全部下さい。この人が支払いますので」
「はーい!」
ぶーぶー文句を言う五条さんに、素知らぬ顔の七海さん。
仲がいいなー七海さんも先生なのかなー?
なんて思いながらレジを打ち、パンを袋に詰めた後、
「あ!ちょっと待って下さいね」
私は厨房に入って。またすぐに出てきた。