第11章 真実
「そんな気はしていたが…。今回の怪我もそれが原因か?」
「そうですね、守一郎に若月が助けてくれたって言われてすぐに助けに行っちゃって…」
「奴の事は諦めろ。」
と、喜八郎の言葉を遮って立花がそう言い切った。
いつもなら自身が所属している委員会の委員長である立花のいうことだけは比較的素直に聞いている喜八郎だったが、この言葉に関してはあからさまな嫌悪感を示していた。
「どうしてですか?」
「本来なら私も、お前の恋路を邪魔したくはない。だが、こればかりは認められない。奴は所詮は暗殺者。我々の敵だ。本気になれば学園長だけでなく我々にも危険が及ぶかもしれない。だから…」
「あぁ~、分かりました。じゃあ僕も先輩達のお手伝いをしましょう。」
真面目に聞いている風に話を聞いていた喜八郎は突然立花の話を遮ってそんな提案をする。
喜八郎曰く、自分が彼のそばにずっといれば暗殺する暇がなくなるし先輩達が常に見張ってる必要もなくなる。さらに自分も彼と一緒にいられる・・・という
「一石二鳥どころか、一石三鳥になりません?」
「あ…だから、それだとお前にも危険が…」
「危険?ないですよ。だって…」
喜八郎は立花の言葉をまた遮って笑った。
そして、畳まれている自分の制服に手を伸ばして中をゴソゴソと漁る。その中からは、彼が使っている鉄扇が出てきた。
「だって本当に殺す気があったら、ただの刀傷を見ただけで手が震えて涙を流して、自分の大事な武器を落としてくるなんてヘマするわけないですもん。」
と彼を思い浮かべているのかどこか愛おしそうに言いながら、持っていた鉄扇を彼が脱出の時に持っていたもう1つの鉄扇の横に並べて置いた。
カタ・・・「…ッ!?」
喜八郎と立花がそんな話をしていた時、食満が小屋の外から物音が聞こえて反応したが、その正体に気づいたからなのか食満は気が付かないふりをして、再び喜八郎の方を向いた。