第10章 実習
「…ぐッ!!」
刀が振り下ろされた音ともに男の低い声が聞こえた。
それに身体を包まれているような感覚も・・・避けられないと悟った瞬間目を閉じていた彼が、そっと目を開けると苦悶の表情を浮かべた喜八郎が目の前にいたのだ。
『…きはッ!!』
彼を庇った喜八郎の名を呼ぼうとしたが、バランスを崩し喜八郎に抱えられながら2人揃って屋根から転げ落ち城とその横の倉庫の間に落ちてしまったのだ。
『喜八郎!!』
すぐに起き上がった彼は、自分に覆いかぶさっている喜八郎を揺すりながら名前を呼ぶ。低く唸る喜八郎の背中は、暗がりで分からないがぬるり…と濡れるした感触がした。そこで彼女は、喜八郎が自分をかばって背中を切られたのだと気が付いた
『あ…き、喜八郎…』
「う゛…。ぅ、うるさい…たら、全く…だから無茶しないでって言ったのに…」
細かく息を吸う喜八郎に、彼は手を震わせながら彼の背中にそっと触れた。
「あれ…、君、でも…泣くんだね…。まるで、女の子だ…」
『うっ…ぐ、…うるさい!』
2人が落ちた光景を見ていた上の侍が「こっちにいるぞ!」と仲間を呼んでいる声が聞こえた。
彼は、涙をグッと拭い喜八郎の脇に入りに身体を支えた。
そして、懐から針を取り出し手に持った。
「…ゲホ。…き、み、それ…」
『…あたしは、殺すって決めた相手以外は…絶対に殺さないって決めてるの!!』
そう言い放って、彼は…闇の中に身を潜めた
呼ばれた仲間が城と小屋の脇に入ってきたが、それを待ってましたと言わんばかりに彼は手に持っていた針を敵に投げつけた
うめき声を上げた侍達が、次々と倒れていく
彼はそんな侍達を避けて城の庭へと出る。
喜八郎は倒れた侍に目をやると、皆等しく大きな寝息やいびきをかいて眠っていた。