第10章 実習
喜八郎を抱えながら、物陰に身を隠しつつ彼は駆けつけてくる敵に向かって針を投げ続けた。時折飛んでくる銃弾は喜八郎を支える左手に持っている鉄扇で防ぎながらなんとか外に出ようとした。
「…ハァハァ」
『クソ!喜八郎!!死んだら殺すから!!』
「ハァ、…に、西側…」
『えっ?』
「僕が…堀っ、た…大き、な…落とし穴がある…。そこまで、引き付けて…」
彼が切れ切れながらも彼にそう伝えた。
彼はその言葉を信じて、少し急ぎ目に彼を連れて西側に向かった。敵もその後を追い西側に・・・
西門が見え始めたところで、等間隔で目印が置いてあるのが見えた。彼はその指示に従いながらトン…トン…と一定の間隔で飛び跳ねながら地面を走っていく。
しかし、その意味が分からない侍達は目印を無視して突き進んだため喜八郎が作った無数の穴に落ちる結果になったのだ。彼女は丁度穴の開いていない部分を通っただけだった。
彼は喜八郎をつれてようやく西門から出て、近くの一番葉が多い茂ってる木の上にたどり着いた。
『…喜八郎。喜八郎!!』
「若月、喜八郎!!」
丁度同じ木に守一郎が隠れていたため守一郎が2人に近づく
必死に喜八郎の名を呼び彼に守一郎も異変を感じ喜八郎を見る。背中に傷があると分かるとすぐに制服をめくる。
「…そこまで深い傷じゃないが化膿したらまずい…。ここはいったん…」
そう言いかけた時、6年の先輩達の合図の音が聞こえた。
決めていた葉の草笛の音が聞こえたら最初に5人集まっていた場所に集合する…とあらかじめ決めてあったため守一郎と彼は顔を見合わせて、今度は守一郎が喜八郎を背にし彼が支えながら城を後にした。