第10章 実習
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「守一郎!由利!!」
食満が用具倉庫に戻ってくると、中では引き続き用具整理をしている用具委員と彼の姿があった。
食満が守一郎と彼の名を呼ぶと守一郎はすぐに、彼は少し不思議に思いながら食満の前に来た。
食満は後輩達には聞かれないように、倉庫の外に出た。
「学園長からの指令だ。2日後の夜に作法委員との共同任務に行くぞ。」
「は、はい!!」
『…食満さん、なぜそれを自分にも?』
「…今回はお前も参加だからだ。」
『は!?』
「おぉ!!やったな若月!!一緒に任務だぞ!!」
事の次第を知らない守一郎は目をキラキラさせて喜んでいるが、彼と食満だけは複雑そうだった。
それでも指令である以上、食満は2人に指令の詳細を伝える。
指令の内容を聞いて、意気揚々と用具倉庫に戻っていく守一郎をよそに彼は食満にどうしても聞きたいことがあった。
『…学園長は、正気ですか?オレなんかを指令に行かせるなんて』
「俺と仙蔵も同じことを聞いたさ。だが詳しいことは教えてくださらなかった。それゆえ、不本意ながらお前も指令に同行だ。…足引っ張るんじゃねえぞ」
『それはもちろんですよ。あと、もう一つ…』
「なんだ?」
『…この指令、殺しは許されるんですか?』
という彼の目に、食満は少しだけ畏れてしまった。
彼の時折見せる本気の殺し屋の目をしたからだ
「…殺しは厳禁だ。あくまで武具を奪うだけだ」
『…そうですか。残念です…殺しができなくてストレスたまってたのに』
そう言って、彼も用具倉庫に戻っていった。
食満はそんな彼の背中を見て一抹の不安に駆られた。
それは、指令が失敗するかも・・・というものではないが、彼の中では何か嫌な予感がしてしまったのだ。