第4章 日常
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『うーん…』
「どうしたの?若月。さっきからうーんうーんって」
『あ…いえ、ちょっと考え事を…』
夜になっても、暗殺に失敗した件でぼんやりしてしまっている彼に髪を梳かしているタカ丸が聞いた。普段彼女は花街での生活を送っていてここまでの集団生活はしていないので大っぴらに悩んでしまっているのだ。
「なにか悩んでるならいつでも相談してね。一応同室なんだから」
『はい、ありがとうございます。ふぁぁ~…』
「あはは、もう寝ようか。」
髪を梳かし終えて櫛を置いたタカ丸は自分の布団に入っていった。彼もその後を追うように自分の布団に入って休むことにした。
***
一度布団に入った数時間後・・・
彼は一度起きてタカ丸を起こさないように部屋を出た。
「…やはり」
「見張っといて正解だったな。」
「やはり油断ならんな!」
深夜の時間だったが、何かあった時のためにと鍛錬が好きな潮江文次郎と中在家長治、七松小平太が遠巻きに暗殺者が約束を絶対守るとも限らないだろうと踏んで彼の部屋を見張っていたのだ。
だが、3人の考えを無視するように彼が向かったのはお風呂場だった。
「風呂場か?」
「…ボソ」
「何をする気だ?行くぞ」
3人は、彼の動向を探るために風呂場の窓から中を覗いてみた。
するとそこでは・・・
『あっちゃ~…さすがにこの時間はお湯張ってないか。仕方ない水でいっか。』
と、寝巻を一度脱いで中に巻いていた晒をほどき始めた。当然晒を外すと彼の・・・いや彼女の裸体が現れ始めた。
彼女は晒を外して残った水に手ぬぐいを濡らして身体を拭き始めた。
昨日は夜中に作戦を決行するためにあらかじめ濡れた手拭いを用意していたが今日は用意ができていなかったため夜中に抜け出して夕方にお風呂に入ったふりをしてこうして身体を洗いに来ていたのだ。