第3章 条件
「お言葉ですが学園長。あいつは仮にも我々をだましている暗殺者。優しくする意味が…」
「お前達、あやつの一族《由利の一族》の事は当然知っておるじゃろ?」
「もちろん、先ほども言いましたが女児しか生まれない一族で花売りをしながら忍術と暗殺業を担っていた一族だと…」
「そこじゃ!!!」
「「「「「どこだ?」」」」」
と、5・6年生が四方八方をキョロキョロ見ている横で学園長は無視してさらに続ける。
「花売りをしながら忍びと暗殺…13歳にも満たない乙女がそんな血濡れた世界にいるなんて…かわいそうにもほどがあるじゃろう!なぁ!」
と学園長は演劇も顔負けの泣きで生徒達に語り掛ける。
生徒達は先生たちを見ても先生達もキョトンとしてるためすべてを察した。
「よって!お主ら、あやつ…いや、彼女に対しては優しく接して彼女に愛される喜びとやらを教えてやってくれ」
と、さっきと違い支離滅裂なことを言いだした学園長に生徒達がひっくり返った。
「学園長!!さっきは下級生にバレないように暗殺阻止せよって言ってたじゃないですか!!」
「しかも今度は女に愛される喜びを教えろと!?何を訳の分からないことを!!」
「お前達…」
と、ギャーギャー喚く生徒達、特に潮江文次郎と食満留三郎は完全に学園長に噛みつくがそれを止めたのは意外にも土井先生だった。それに生徒の数人もその意味が分かっていた。
「多分あの子は、ズビ・・・さっきみたいに威圧や脅しじゃ心を閉ざしたままで何の解決にもならない…ヘックシュ!」
「特に由利の一族が活動していた花街は暗いうわさの絶えない場所…だからと言って…」
「おう!!じゃあ友達になればいいのか?」
善法寺伊作と立花仙蔵が理解はしているが抵抗を見せる中でずっと話を聞くだけだった七松小平太が空気を読まずに一言そう言った
「小平太貴様は黙ってろ!!」
「だってそう言うことだろ?周りにバレないように暗殺の阻止するなら友達になって近くにいた方が安全だし周りにも怪しまれないだろう。それに学園長のいうように友達ならば自然と優しくなるだろう」
・・・ごく稀にこの手の人間は確信を突くことを言うものだと、全員が思った瞬間だった。