第17章 秘密
「ちょっと…!」
『…実物持ってった方が、レポート書くのに楽だから!』
「…あっそ。早く登ってきなよ」
『はいは~い…ッ!?』
落ちていた刀を手にした若月は、急いで木の上に登ろうとした。すると、どこからか視線のようなものを感じた。
辺りをキョロキョロしても、刀を交えている侍ばかりで何もなかった。
『…気のせいか…』
と、思い木に足をかけた瞬間・・・!
ズダーーーーーン!!!!!と、大きな音が響き渡った。
音に気が付いた喜八郎が携えていた鋤を持って辺りを見ると・・・自分がいる木の下で、若月が倒れているのが目に入った。
「…ッ和歌菜!!!」
喜八郎は思わず彼女の本名を呼ぶほど驚き、慌てて木から降りた。しかし、喜八郎よりも早く黒い何かが木の根元を通り過ぎた。
喜八郎が地面に着地して周りを見ると、彼らがいた木とはまた別の木の上に人影を見つけた。
その忍者装束に喜八郎は覚えがあった。
「…タソガレドキ忍者!!」
「…喜八郎!どうした?」
「あれ?若月は?」
異変に気付いた他の4年生達が集まってきたが、喜八郎は殺意むき出しの顔にただならぬ気配を瞬時に感じた。そして喜八郎が殺意を向けている方に全員が一斉に目をやる。
木の上にいるタソガレドキ忍者が、彼女を抱きかかえているのが見えると全員が手持ちの武器を構える。
すると、彼女を抱えているタソガレドキ忍者が首をクッと捻って彼らを呼ぶような動作をした。
4年生達は一瞬警戒したが、タソガレドキ忍者が彼女の身体を連れて行ってしまったことで、気が立っている喜八郎が脇目も降らずに走り出してしまったため、ついて行かざる負えなくなってしまった。