第16章 告白
彼が少し泣いて、落ち着き始めた。
ずっとタカ丸が彼の右側から肩を抱いていたが途中から喜八郎がしびれを切らしたようで彼の左側に陣取った。
「…大丈夫?」
『…グス、…ん』
「なんなんだ一体。守一郎がいきなり部屋から出て行ったと思ったらタカ丸さんと若月が揉めてて…」
「全然状況が読めん…」
三木ヱ門と滝夜叉丸が頭をひねっているが、他の3人は何も言わなかった。彼が自分から言うのを待っていたのだ。
『…あたし』
ようやく落ち着いたのか、彼・・・彼女が口を開いた。
3人は何も感じなかったが、滝夜叉丸と三木ヱ門は彼女の突然のあたし発言に驚いていた。
『あたしの本当の名前は、由利和歌菜。忍術学園の学園長…大川平次渦正を暗殺するためにここに来た、…暗殺者。』
事情を知っていた2人はゆっくりうなずいた。
間接的に事情を知っていた守一郎は、息を飲んで聞いていたが何も知らなかった2人は酷く驚いていた。
「あ…暗殺者?」
「若月…お前が?」
『…若月って名前は、本名を隠すための偽の名前。』
小さく答える彼女に、滝夜叉丸は真っ先に戦輪の輪子を構えた。それを見た喜八郎は持っていた鋤を構えて彼女を守ろうとする。
「喜八郎…それにタカ丸さんも守一郎も…知っていたのか?」
「…うん」
「僕は、最初から女だって気づいていた。それで先輩達に暗殺者だって事を聞いた」
「俺は、任務の時に間接的に…」
2人に申し訳なさそうに答える3人に、2人は余計に混乱した。
それでも、彼女は小さく言葉をつづけた。
『生まれは、花街にある色小屋の1つの《由利の一族》。そこで生まれたあたしは5歳で殺しを教えられて…7歳の時に初めて人を殺した。』
この言葉には、さすがに5人全員が驚いた顔をした。
彼女は、膝を抱えながら時々涙声になりながらさらにつづけた