第15章 執念
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『きゃぁ!!』
女の人に連れてこられた彼は、路地からさらに裏手にある家
その家の庭にある薪棚に投げ捨てられるように突き飛ばされた。
そして、積んである薪にぶつかった拍子に倒れた彼の腹を女の人は何の躊躇もなく蹴り始めた。
「このっ!!役立たずのバカ女が!!お前のせいで!!うちの店がどうなったか分かってるのか!!」
彼を蹴りながら女は彼に向かって叫ぶ。
彼は、最初に腹を蹴られたせいですぐには立ち上がれずに何とか身体を丸めているが、女はそんなこともお構いなしに蹴り続ける。
「お前が!!さっさと大川平次渦正を殺さないから!!うちの稼ぎ頭の桜と椿が!!タソガレドキに連れて行かれて殺されちまったじゃないか!!」
『えっ……桜姉さんと、椿…姉さん…?』
「あぁ!お前の任務が遅いからって連れて行かれて、一族の責任を取るために殺されたんだ!!お前のせいなんだよ!!役立たず!!」
ついに女は、薪棚に積んであった薪を1本手にしそれを使って彼を殴りつけ始めた。
「お前は昔からそうだ!!殺すしか能のない出来損ないが!!ちょっと大婆様から気に入られてたからって!!女として客も取れなかった、くせに!!!」
女の罵りが止まらない中で、彼は過去の事を思い出していた。
自分はあの店でも・・・何の役にも立っていなかったこと
人を殺すことを教わって・・・そればっかりやって・・・
それしか、できなくて・・・
あたしには・・・それしか、価値が・・・なくて
「桜じゃなくて…お前が死ねばよかったんだ!!!」
と、女は渾身の力とばかりに薪を高く振り上げた。
蹴られ殴られ続けた彼にはもう抵抗する力もないようで、その様子を見ていることしかできなかった。
彼は、そのまま虚ろなまま目を閉じかけた
「おやおや、綺麗な女人がこんなもの持ってちゃいけねえよ」