第14章 日常.3
「すみません!!」
「守一郎!工具の扱いには気をつけろ!!」
「はい!!若月、ごめんな!」
『あ、うん…。大丈夫』
と、若月は予想以上の事が起こってびっくりしているようだった。
すると、別のところの修繕を行っていた富松作兵衛に下坂部平太、福富しんべヱに山村喜三太の4人が彼らのもとにやってきた。
3人の様子を見た下級生達は、なぜかじぃ~っと食満を見た。
「ん?なんだどうした?」
「はにゃ~食満先輩…」
「ん?」
「食満先輩、どうして若月先輩のこと抱っこしてるんですか?」
「えっ…?…あっ!!ぁああ!!すまねえ!!」
『いえ、全然…おぉ、びっくりした』
彼はどの意味でびっくりしたか分からないが、食満は明らかに動揺していた。1年生達は、「食満先輩ズルいです!」「若月先輩僕達もギューってしてください!!」と、若月にハグを求め始めた。
「食満先輩も若月先輩にギューってしたかったんですか?」
「いや…俺は、そうじゃ…」
しんべヱが笑顔で言うが、食満は別にハグをしていたわけではない。ただ腕を引いた勢いで腕の中に入れてしまっただけだった。
だが、1年生の3人にはハグに見えたようでニコニコしている。ただ、3年の富松作兵衛は少し恥ずかしそうにしていた。
「ん、ん゛ん!!お前達!!修繕が終わったら次行くぞ!!まだ壊れてるとこがあるんだ!」
と、気持ちを落ち着かせて用具委員会は次の修繕場所に向かって行った。
・・・その光景を見ていた5年生は
「へぇ~、食満先輩がな」
「アレは割とガチだな…。」
「面白ぇ~!!」
「お前ら、僕の事忘れてるだろ…」
と、ニヤニヤが止まらないような状態だった。
そして、久々知の問題は当に忘れ去られているようだった。