第13章 思想
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「くそ!!この女!騒がないように口塞いだのに椅子を蹴り壊しやがって!!」
「でも、容姿のいい女は利用価値があるからな!!八方斎様のもとへ連れて行こう!!」
と、口を塞がれ縄で縛られているキリ丸と彼を頭上に掲げながら走るドクタケの忍者たち。キリ丸はその中に顔見知りもいるようでなんとか声を上げようとしてるが、忍者たちは無視して運んでいる。
しかし、彼の方は至って冷静で着物の袖の部分に隠し刃を仕込ませているためそれで縄を簡単に着ることができた。
1本切ればすべての縄がほどけたため今度は懐に隠していた彼の武器である鉄扇でドクタケ忍者たちを叩き落としていく。
女だと思って連れてきていたドクタケ忍者たちは大慌て
女がこんな鉄扇で次々と仲間をぶん殴っている様子にビビってしまっているようだった。
そして、未だ頭上に掲げられているキリ丸の縄を鉄扇の弧の部分の刃で切断して縄の切れたキリ丸を抱きかかえて、彼は森の中に入った。
「くそ!!女のくせに!!追うぞ!!仲間を呼べ!!」
と、ドクタケ忍者たちが合図をすると
彼らの周囲にさっき以上に人の気配を感じるようになった。
「うぅ~若月センパ~イ…」
『大丈夫?オレに任せなって!』
と、不安そうに抱えられているキリ丸にニコッと笑いかけるとキリ丸は必死に彼の着物にしがみついた。
そして、森を抜け木がなくなった崖の辺りに近づいた。
ここなら周りが崖になっているから背後から襲われることはないと踏んでいたのだ。
彼は、抱えていたキリ丸を降ろし自分の背に隠した。
左腕でキリ丸を支え、右手で鉄扇を握る。
身構えていると、ドクタケ忍者たちが森の中からぞろぞろと現れて手裏剣やら苦無やらを構えて掛け声と共に彼らに襲い掛かってきた。