第2章 雨と雲
父は手続きがあると警察署に残り
私と母は先にタクシーで帰宅した。
ダイニングテーブルに座り
暗いままの部屋で母と二人で泣いた。
もうこの家にお兄ちゃんの明るい笑い声が響く事はない。
そう考えただけで涙が止まらなかった。
父が暗い表情のまま帰宅し、三人でまた抱き合って泣いた。
どれだけ泣いていたのか定かではないが
気が付いた時には窓の外が明るくなっていた。
母は泣き疲れて机に顔を伏せ、眠ったようだった。
父はソファーに腰掛け俯いたまま動かない。
私は明るくなった窓の外を見上げていた。
昨日の雨が嘘のような澄んだ空を見てまた涙が流れた。
その日から悲しむ間もなく
慌ただしく時が過ぎた。
葬式には学校の先生やお兄ちゃんの同級生、
私の友達も参列してくれた。
香山先輩の姿もあった。
お兄ちゃんが助けたという子ども達とその親御さんも参列し、私達家族に感謝を伝えてくれた。
みんな口々に「立派なヒーローでした。」
とお兄ちゃんを称えてくれる。
私はぼんやりと参列者を見送っていた。