第2章 雨と雲
「パトロール中に敵の襲撃に遭い、
巻き込まれた子ども達を庇い瓦礫の下敷きに…
我々が到着した際にはすでに…」
霊安室から出て廊下で警察の方から
事情が説明された。
私はその説明をぼんやりと他人事のように聞いていた。
お兄ちゃんは…死んだの?
昨日、笑って話したばかり。
朝はいってらっしゃいと送り出したばかり。
そのお兄ちゃんが、死んだ?
少しずつ頭が理解をし始めるが
理解することを拒んでいる。
お兄ちゃんが死ぬわけ…ない。
そんなわけない。
お兄ちゃんはこれからヒーローになってたくさんの人を笑顔にするんだ。
こんなところで死ぬはずないでしょう?
自分で自分に必死に言い聞かせるが
横たわったヒーロー服を着た遺体、泣きじゃくる両親、警察の説明…
すべてがお兄ちゃんが死んだのは現実なのだと突きつけてくる。
「これが現場に…」
そう言って警察の方が血塗れの壊れたゴーグルと瓢箪型のスピーカーを渡してくれた。
お兄ちゃんが撹乱のために使用していた瓢箪型のスピーカー。
そして私が入学祝いで贈ったゴーグル…
壊れたゴーグルを手に取る。
こんな形で戻ってくるなんて思ってもいなかった。
視界が急にぼやけ
ポタッとゴーグルに水が落ちる。
「お兄ちゃん…」
ポタポタとゴーグルが濡れていく。
父と母がまた泣きながら私の肩を抱いた。
ああ、お兄ちゃんは死んだのか。