第2章 雨と雲
列の最後に消太くんとひざしくんが見えた。
消太くんは長い前髪で表情が見えない。
ひざしくんは今まで見たことがないくらい暗い表情をしている。
消太くんとひざしくんが私達の前にくる。
「…おれ、一緒にいたのに…すみませんでした」
消太くんがポツリと呟いた。
ひざしくんは暗い表情のまま、俯いている。
「プロも止められなかった敵を一人で倒したと聞きました。謝ることなんてない。君は立派なヒーローだよ……。」
「朧も霞も、いつもあなた達のことを楽しそうに話してくれていたわ。消太くんにひざしくんよね…?朧と友達になってくれて本当にありがとう。」
父と母は涙ぐみながらも優しい顔で二人に声をかける。
消太くんもひざしくんも
俯いたまま父と母に頭を下げた。
ひざしくんが私の方をみて
「霞、また…学校でな…」
一言そう声をかけて消太くんと去っていった。
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兄の遺体は頭部分の損傷が激しく
家に戻ってくることはなく
葬式場に直接運ばれた。
同じ理由で棺に入れられても顔は見られないようにされていていた。
衣服は白い装束に変えられていて
着ていたヒーロー服は一度家で洗ってから棺に入れられた。
天国でもヒーロー活動ができるように、と母が入れた。
私はゴーグルを綺麗にしたが棺に入れることは出来なかった。
家族のみで火葬場で最後のお別れを済ます。
私はけっきょく兄の顔を見れぬまま、
煙になっていく兄を見送った。
兄がようやく家に帰ってきた時は
すでに骨になった後だった。