第34章 踏み出す一歩
コンコン。
突然、ドアからノック音。
ここに来るのに律儀にノックをする人は少ない。
教師陣はもちろん普通に入ってくるし、よく遊びに来る三年生の波動さんは大きな声で挨拶をしてドアを開けるし、同じく三年生で一番よく来ている通形くんに至っては必ず一発ギャグをかましながら入って来る。
私の知る限り、きちんとノックをしてここを訪ねるのは緑谷くんだけ。
三年生の天喰くんもよく来てくれるし、ノックをしそうだけど一人で来る事はほとんどない。
緑谷くんかな……?
開いたドアから覗いた顔は、意外な人物だった。
「心操くん……!」
「……え、霞先生?」
意外な来客に驚いた私と、私がいる事に驚いた彼。
一瞬フリーズしたものの心操くんがハッとして声を発した。
「相澤先生がここに来てるって聞いて来たんですけど……」
「ああ、さっき職員室戻ったよ!
入れ違いになっちゃったね。」
そっか…と心操くんは首に手を当てた。
そしてエリちゃんに軽く挨拶をしてから私の方をチラッとみた。
「霞先生、帰ってきてたんですね。」
「ん?あーうん。今朝方ね!」
「九州行ってたんですよね?」
「そうだよー。復興のお手伝い。」
荼毘と会敵した事は警察と雄英の教師陣のみの秘密。
不安を煽る事になるから、生徒たちには伝えられていない。
「霞ちゃん。
ちょーし悪いんです。」
「……調子悪い?」
「ちょこーっと怪我しただけよ。」
「ふーーん。」
ジロジロと私を見てくるので
目を逸らした。
心操くんは割と勘が鋭いからな……。