第34章 踏み出す一歩
「それに霞が居なくなったら生徒たちがうるさいだろ。
心操だって怒るぞ?」
「……そうだね。
まだ見届けてないもんね。
ヒーロー科のみんなの成長と
スタートラインに立つ心操くんを。
対抗戦、楽しみだな。」
「……ああ。
だから安心して帰ってこい。」
優しく頭を撫でてくれる消太くんに笑顔を返すと、そのまま顔を近付けてきた。
思わず、両手で消太くんの顔を受け止める。
「ちょっと!何もしないんじゃなかったの?」
「何だよ。
キスぐらいいいだろうが。
どんだけ我慢したと思ってんだ。」
本気で抵抗するつもりなどない力の入っていない腕をいとも簡単に取り払われ、そのまま近付いてくる消太くんを受け入れる。
いつか裏切ることになったとしても、今はこの甘い時間を手放したくない。
自分がこんなに自制心のないやつだと思っていなかった。
消太くんを裏切ることのないように
もっと強くならないと……。
そんな考えも一瞬。
消太くんからの降りてくる優しい口付けに意識を持っていかれ、何も考えられなくなった。