第34章 踏み出す一歩
なるべく、呆気らかんと。
重たい空気にならないように二人に頼む。
敵連合をどうにかしたいという気持ちは、どのヒーローも警察の方々も同じだ。
塚内さんが持っていた自身の帽子を深くかぶり、顔を隠した。
「その決意、決して無駄にはしないよ。
こちらも全力で調査を続けます。」
「……そうだな。」
グラントリノが塚内さんの背中をポンと叩く。
「お二人も根を詰めすぎないで下さいね。
倒れられては元も子もないです!」
「年寄り扱いしおって。」
「ハハ……クラウディアが天使に見えるな。」
それぞれ正反対の反応を示し、病室を後にした。
ガランと静かになった部屋で一人で考え込む。
私だけでは何もわからなかったけど、少しでも今後の調査に役立てば……。
万が一の時が来たら、
私は消太くんの隣に居られなくなるかもしれない。
ようやく気持ちが通じ合った。
長年の片想いを受け入れてもらえた。
それなのに……
私のしようとしている行為は、消太くんを裏切る事になる。
こんな事になるなら気持ちを伝えずにずっと抑え込んでおくべきだったのかも……
消太くんの気持ちを聞いた時、突き放すべきだったのかも……
ねぇ、お兄ちゃん。
後悔しないようにするのって、凄い難しい事なんだね。
お兄ちゃんみたいに、
自分を犠牲にして誰かを助けて、大事な人たちを悲しませるヒーローにはならないって思っていたけど……
お兄ちゃんはやっぱり立派なヒーローだったんだなって、今は心からそう思うよ。