第32章 立ち込める暗雲
「グワ~ッ!!また逃げやがった!!!」
ミルコは悔しそうに地面をダンダンと踏みつけている。
危機は去ったみたいだった。
とにかく、この被害者を病院へ連れて行かないと…
「………ミルコ、ゲホッゲホッ………」
喉が焼けたのか、声が出しずらい。
「クラウディアだっけ?
大分焼かれてんな、すぐ病院連れて行く!」
声が出ないので必死にジェスチャーで
もう一人の存在を伝えた。
見るからに重症なので抱えて運ぶのは厳しい。
かといって、私もいつ意識が飛ぶかわからないので個性で運ぶこともできない。
「オッケー。
とりあえず応援呼んでくる!」
そう言って自らが蹴破った屋根から
文字通り、跳んでいった。
ミルコが蹴破った穴から雨が吹き込んできた。
そういえば、雨降ってたんだっけ。
ぼんやりと思考を巡らせる。
なんとか私は生きている。
ミルコが来てくれなかったら確実に死んでいた。
この人も守れていなかった。
「ヨワイな~………」
情けなくかすれた声が出て、
そのまま意識を手放した。