第32章 立ち込める暗雲
「……た…たす……け…て……」
背後から微かにだが、声が聞こえた。
被害者が生きている。
ハッとそちらに意識がいき、一瞬力が弱まると荼毘は身体をよじり抵抗。
再び抑えようとするも、荼毘自身から蒼炎が噴出した。
勢いで吹っ飛ばされるも受け身を取って態勢を立て直す。
荼毘は笑いながら発火していた。
よくみると荼毘は自身の炎で自身の体を蝕んでいる。
個性が体に合っていないようにも思える。
「あなた、身体と個性が合っていないわよね。
その火傷は自らの炎でついたものでしょう?」
荼毘は何も答えなかった。
先ほど吹っ飛ばされたおかげで奥にいる人の姿が確認できた。
さっきの声は必死に振り絞ったのだろう、今はピクリとも動かず横たわっている。
注意をこちらに引き付けて、奥にいる人を少しでも安全な場所へ運ばないと。
「そんなに急いでいる様子もなさそうだし、
もう少し教えてよ。私のDNAが必要ってどうゆう意味?」
荼毘に気付かれないように雲を被害者の下から発生させ、浮き上がらせた。
ゆっくりゆっくり私たちから距離を取らせる。
「脳無の作り方、知ってるか?
あれのベースは人間なんだとよ。
そこに個性を複数与える。
そんで、適応した奴はめでたく脳無って怪物になれるらしいぜ。」
「私を脳無にしようとしているってこと?」