第32章 立ち込める暗雲
「……そんな路地裏で何をしていたの?」
「お前がこの辺りを通過するって情報があったからな、しらみつぶしに害虫退治だよ。」
この臭いの原因は荼毘が歩いてきた暗くて奥が見えない路地裏からのようだ。
人が襲われているのだとしたら、安否を確認しないと……。
荼毘の捕獲も大事だが、人命優先だ。
チラッと荼毘の背後の様子を伺う。
「あー。安心しろよ。
ちゃんとウェルダンで焼いてあるぜ?
生かしておく理由もないからな。」
何でもないようにヘラヘラと笑った。
やっぱりイカれている。
私は荼毘をギッと睨んだ。
「そんな怖ぇ顔すんなよ。
俺はお使い頼まれてんだ。
騒ぎを起こすつもりはねぇよ。」
「……お使い?」
「ああ、お前さんを連れて来いっていうお使いなんだよ。
悪い風にはしねぇよ、仲良くやろうぜ?」
私を連れて行く?
死柄木の命令ってこと?
必死に思考を回す。
荼毘を捕らえつつ、被害者の元へ迎えたらベスト。
……どうする。
「まぁ、生死は問わんって言われてんだけどな!」
荼毘がそう叫ぶと手のひらから蒼炎を繰り出した。
咄嗟に転がり回避する。
相手は中距離タイプ、私はどちらかと言うと近距離タイプ……。
分が悪い。